オッズは最強の予想家である ― データ分析で見えた壁
機械学習で市場に勝てるのか。結論から言えば、それは想像以上に高い壁です。
オッズは何を表しているか
単勝オッズは、賭けた人々の判断の集約です。何万人もの参加者が、それぞれの情報・分析・勘に基づいて資金を投じた結果として、オッズが形成されます。
これは一種の集合知です。個々の判断には偏りがあっても、多数が集まることで平均化され、驚くほど正確な確率推定になります。
オッズと実際の勝率の関係
オッズから推定される確率と、実際の勝率を比較すると、両者は非常によく一致します。単勝2倍の馬は、おおむね実際に4〜5割の確率で勝ちます。単勝10倍の馬は、1割前後の確率で勝ちます。
この一致は偶然ではありません。もし大きくズレていれば、そこに賭ける人が現れてオッズが動き、ズレが解消されるからです。市場が効率的であるとは、こういうことです。
控除率という重力
ただし競馬には控除率があります。売上のうち一定割合(単勝で約20%)が主催者に引かれ、残りが払戻に回ります。
つまり、全馬に均等に賭ければ、必ず約20%負けます。市場が完全に効率的なら、どんな買い方をしても回収率は約80%に収束します。プラスにするには、市場が間違っている場所を見つけるしかありません。
オッズ帯別に検証する
市場の歪みを探すには、オッズ帯ごとに実際の回収率を集計するのが基本的なアプローチです。過去のレースを大量に集計し、「単勝1〜2倍の馬を全部買ったら回収率は何%か」を、帯ごとに調べます。
ここで有名な現象が現れます。人気薄ほど回収率が低い傾向です。オッズが高い馬ほど、オッズから期待される勝率よりも実際の勝率が低くなる。これは「ロングショット・バイアス」と呼ばれ、競馬に限らず多くの賭博市場で観測されます。
人は大穴に夢を見て、実力以上に賭けてしまう。結果としてオッズが不当に低くなり、期待値が下がる。逆に言えば、堅い決着のところにわずかな歪みが残ることがあります。
データだけで市場に勝てるか
過去の戦績データから機械学習で勝率を予測しても、その精度がオッズを上回ることは容易ではありません。オッズには、データに現れない情報——調教の動き、パドックの気配、厩舎の意欲、当日の馬体重や気配——が織り込まれているからです。
データだけで市場を超えようとするのは、何万人の目と情報を相手に一人で戦うようなものです。実際に検証してみると、モデルの予測精度は「オッズとほぼ同等」に落ち着くことが多く、それを明確に超えるのは困難でした。
それでも独立した視点には価値がある
では意味がないのかと言えば、そうではありません。
市場と独立した推定値を持つことで、市場と食い違う場面が可視化されます。モデルが高く評価しているのに人気が無い馬、逆に人気の割にモデルの評価が低い馬。そうしたズレは、少なくとも「立ち止まって考える理由」にはなります。
当サイトがオッズを一切使わずに勝率を出しているのは、この独立性を保つためです。オッズを入力に加えれば予測精度は上がるでしょうが、それは市場の意見をなぞるだけで、独立した視点にはなりません。
誠実な結論
データ分析で競馬に勝てるかという問いに、当サイトは「簡単ではない」と答えます。市場は強く、控除率は重い。
それでも、なぜこの馬が評価されるのか、どの条件が効いているのかをデータから読み解く作業には、それ自体の面白さがあります。当サイトの予測は、当てるための道具というより、データから競馬を眺めるための道具だと考えています。