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勝率から複勝率を導く ― Harvilleモデルの考え方

「1着になる確率」が分かれば、「3着以内に入る確率」も計算できます。その考え方を解説します。

問題設定

各馬の勝率(1着になる確率)が推定できたとします。A馬30%、B馬20%、C馬15%…といった具合です。ではA馬が「2着以内に入る確率」は何%でしょうか。

単純に足せる話ではありません。2着以内に入るには、「1着になる」か「誰かが1着になった上で自分が2着になる」かのどちらかです。後者は条件付き確率になります。

Harvilleモデルの発想

1973年にHarvilleが提案した方法は、直感的で分かりやすいものです。

まず1着馬が決まります。A馬が1着になる確率は30%。では、B馬が1着になった世界を考えましょう(確率20%)。その世界では、残る馬たちで2着を争います。このときA馬が2着になる確率は、B馬を除いた残りの馬の中での相対的な勝率だと考えます。

式で書けば、B馬が1着でA馬が2着になる確率は次のようになります。

P(B) × P(A) ÷ (1 − P(B))

B馬が抜けた分、残りの確率を正規化し直すわけです。これを全ての「1着候補」について足し合わせれば、A馬が2着になる確率が求まります。3着も同様に、1着と2着を除いて計算を続けます。

複勝率=3着以内に入る確率

この計算を進めると、各馬について「1着になる確率」「2着になる確率」「3着になる確率」が個別に求まります。これらを足せば、3着以内に入る確率——つまり複勝率になります。

この方法の良いところは、勝率と必ず整合する点です。複勝率が勝率を下回ることはありませんし、連対率は必ず勝率以上・複勝率以下になります。同じ確率分布から導出しているので、矛盾が生じません。

モデルの限界

Harvilleモデルには既知の弱点があります。

「1着馬が抜けたあと、残りの馬の相対的な力関係はそのまま」という仮定を置いていますが、現実はそう単純ではありません。強い馬が1着を取れなかった場合、それは何か不利があったということで、2着に来る確率も下がっているはずです。

実際にデータを取ると、Harvilleモデルは人気馬の連対率・複勝率を過大に見積もる傾向があることが知られています。1着を外した強い馬が、必ずしも2着に来るわけではないからです。

この偏りを補正するため、Henery(1981)は確率にべき乗のパラメータを入れる改良版を提案しました。2着以降の計算で確率を少し「なまらせる」ことで、実測値に近づける手法です。

当サイトでの扱い

当サイトの連対率・複勝率は、素のHarvilleモデルで算出しています。補正を入れていないため、上位人気馬の複勝率はやや高めに出る可能性があります。

また、これらはあくまで入力した馬の中での確率です。実際の複勝は出走頭数によって払戻の対象が変わります(7頭以下では2着まで)。当サイトの「複勝率」は純粋に「3着以内に入る確率」を意味しており、実際の複勝馬券の的中確率とは定義が異なる点にご注意ください。

まとめ

Harvilleモデルは、勝率という1つの情報から、連対率・複勝率という別の情報を引き出す仕組みです。追加のデータを必要とせず、勝率とも矛盾しない。シンプルで美しい方法ですが、現実との細かなズレは残ります。

勝率予測ツールで表示される連対率・複勝率は、この方法で導出したものです。